山鳩の鳴き声が響く和光市の寺院「東明寺・吹上観音」

和光市には、歴史の古い立派な神社仏閣がいくつもあります。

「臨済宗・建長寺(りんざいしゅう・けんちょうじ)派・福田山・東明寺(とうみょうじ)」も、その一つです。

観音さまをまつることから「吹上観音」として市民に愛されるこちらの寺院を、今回はご紹介したいと思います。

吹上観音に行ってみよう!

東明寺・吹上観音は、和光市駅から少し離れた場所に建立されています。

私は自転車でむかいましたが、ゆうに25分以上かかる距離で、徒歩ではとうてい無理だと思いました。

ここはやはり車か、バスを利用することをおすすめします。

成増駅北口と和光市駅北口をむすぶ東武バスがありますので、そちらに乗り、「吹上観音下」で下車をしてください。

東明寺・吹上観音は、小高い小さな山の上にぐるりと建てられているイメージがあるため、私は少し入り口に迷ってしまいましたが、坂をのぼるのではなく、道路沿いに歩いていけば自然に入り口を発見できると思います。
(近くに「やまと幼稚園」がある関係で、園児たちの笑い声が聞こえてきます)

そして総門に入ると、そこは別世界です。

少しドキドキしながら、私も総門をくぐってみました。

東明寺・吹上観音のいわれをご紹介します

本格的に寺院に参拝する前に、東明寺・吹上観音のいわれを簡単にご紹介したいと思います。

東明寺・吹上観音は、奈良時代に行基(ぎょうき)が視察のため各地をめぐっている途中で観音像を彫刻し観音堂に安置をしたところから由来しています。

行基とは、飛鳥時代から奈良時代にかけて活動した日本の仏教僧です。(668年~749年)

のちに鎌倉幕府滅亡後、山岳修行と宗教的な活動を主におこなう実践・儀礼的な修験寺院の正覚院(しょうかくいん)が東明寺とあらため、建長寺の末寺となり別当寺(べっとうじ)になりました。
(別当寺とは、神と仏を調和させ同一視する神仏習合がおこなわれていた江戸時代以前に、神社を管理するためにおかれていた寺のことです)

江戸時代初期の1646年(正保3年)には、観音堂は東明寺の境内にうつされています。

観音さまのことをしらべてみましょう

そもそも観音さまってどういう存在なのでしょう?

今回私はそう思い、調べてみることにしました。

観音さまとは、「観世音菩薩(かんぜおんぼさつ)」の略称なのだそうです。

人々の苦しみをのぞいたりお願いごとを聞いたりしてくれる慈悲深い仏さま、すべてをさします。

菩薩とはインドの言葉で「ヒトを救う人」という意味になり、子どもたちを見守ってくれるお地蔵さまも未来の仏となる弥勒さまも、ひとしく菩薩さまになります。

観音菩薩は、人々が苦しい目にあったとき、その者が一心に観音菩薩さまの名をたたえれば、すぐにその声を聞き救いの手を差し伸べてくれる菩薩さまなのだそうです。

そして観音菩薩さまは、人々の助けを求める声を聞きのがさぬように、常に世の音を観じて(かんじて)いる菩薩さまだからこそ、「観音菩薩」と呼ばれていることが今回わかりました。

私は、観音菩薩さまを知れば知るほど、強い慈悲深さを感じずにはいられませんでした。

これまでも、いろいろな人たちの心の支えとなり、ずっと和光の土地を守ってきてくれたのでしょうね。

とても胸が熱くなりました。

総門は別世界の入り口でした

それでは、寺院に足をふみいれてみましょう。

まずは、2002年(平成14年)建立の総門です。

立派な石と木造の門が立ち、中央には長めの石の階段がみえます。

石門には、「東明禅寺」と「吹上観音」の文字がそれぞれ刻まれ、少し威圧感まで感じさせます。

中に入ってみると、けっこうのぼりがキツそうな階段に少しおじけづいてしまいましたが、勇気をだして一段一段、ユックリと境内に入っていきました。

寺院の隣にある幼稚園からは、ときおり園児たちの楽しそうな声がもれてきます。

しかし、階段をのぼるうちにその声も気にならなくなり、厳粛な空気に変っていくのを肌で感じました。

階段をのぼることで、日常生活から切り離されていくんですね。

こうやって、心も体もお参りに向いていくことが、とても大切なのだと思いました。

和光市最大の仁王像に会えます!

階段をのぼりきり、ゆるいカーブを曲がりながら左に折れると、“こんな立派な木造建築がこんなところに!”と、おもわず驚いてしまうほどの仁王門があらわれます。

突然あらわれた、1993年(平成5年)建立の精巧な造りの木造建築に、本当にビックリしてしまいました。

そしてそこには、和光市最大の木造の仏像、仁王像が2体いらっしゃいました。
(江戸時代前期の作品だと言われているそうです)

大きさは2m以上。

とってもとっても大きいです。

それに表情が怖い!

その仁王像が、左右におさめられた仁王門の迫力といったら…。

精密で本格的な木造の仏像に、まさか和光で出会えるとは思っていなかった私は、圧倒されながら仁王門を通らせていただきました。

みなさんにも、ぜひ見ていただきたい迫力です。

観音さまがいらっしゃる本堂(観音堂)

仁王門を入り、さらに数段の階段をのぼると、そこには観音さまがまつられてある本堂(観音堂)が姿をあらわします。

1776年に火事で焼失したそうですが、右手と左足以外はキセキ的に助かり、1781年に無事に再建されています。

そのいわれのため、足の病をなおし火の難を防ぐという信仰も集めているそうです。

ステキな信仰ですね。

観音堂に向きあってみると、この場所が和光市とは本当に思えなくなりました。

荘厳で厳粛な空気だけでなく、庭の洗礼された美しさにも目をうばわれ、まるで京都で寺院めぐりをしているような気持ちになります。

私の背後からさす日の光にてらされた観音堂の美しさは、観音さまが照らしてくださったのかな?と思うほど、心に響く美しさでした。

日本の木造建築って、本当に素晴らしいですね。

遠く山鳩の鳴く声が聞こえ、梅やボケの花もほころびはじめています。

観音堂をかこむように整えられたお庭も、その他の建物も、何もかもが愛情をもって整えられているのが伝わってきます。

そんなステキな時間は、あっという間に過ぎていきました。

あの中に、観音菩薩さまがいらっしゃると思いながら、ユックリと深くお参りをして、東明寺・吹上観音をあとにしました。

境内には、他に水場や鐘楼がたち、お地蔵さまなどもいらっしゃいます。

木造建築が多いため、とても風情があり、どことなく懐かしい思いにもかられました。

観音堂背後の土塁(土できずいた堤防)には、庚申塔(こうしんとう・中国より伝来した道教に由来する庚申信仰による石塔)135基がならんでいるそうですが、同じように土塁にある八幡神社とともに現在は非公開になっています。

また階段が苦手だわと思った方には、総門左手の坂をぐるっと右に回り込むと、駐車場の横に「参道入口」がありますので、そちらをご利用されることをおすすめします。

こちらは、仁王門横から入れるルートになっています。

山鳩の鳴く美しい寺院へいらっしゃってください

和光市にいるとは思えない、静かで清らかな寺院である「東明寺・吹上観音」。

見るもの見るものがすばらしく、こんな場所がある和光市を誇りにも感じました。

そして、どうしても疲れがたまってしまうストレス社会において、あたたかく響く山鳩の声は、終始私の心をいやしつづけてくれました。

美しくも気高いこの寺院に、心をいやしにきてはいかがでしょうか?

あっという間に、別世界へと連れていってもらえるでしょう。

臨済宗・建長寺派・福田山・東明寺
住所:〒351-0101 埼玉県和光市白子3-14-13
アクセス:東京メトロ有楽町線・副都心線和光市駅北口から
東武バス(増09)成増駅北口行き「吹上観音下」下車
東武東上線成増駅北口から
国際興業バス(高01)高島平操車場行き「吹上バス停」下車
電話番号:048-461-1864
開門時間:8時00分~17時00分
※新型コロナウイルス感染拡大等により、開門時間等が記載と異なる場合があります。訪問時は事前に確認ください。

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